長襦袢 の胸周りに入るシワと空気について考える。

長襦袢 を着用すると必ず胸周りにシワがより空気が入るように思います。シワや空気はそのままで問題ないものなのか。空気が入った状態で着用していると、布が動き、着崩れにつながるのではないか。今回は、長襦袢の胸周りにどんなシワがあり、空気が入っているのか比較したいと思います。

長襦袢

長襦袢 の胸周りのシワや空気とは

ここで言う長襦袢の胸周りのシワとは、鎖骨あたりに入る衿に並行したシワ。空気とは、身体から布が浮いた状態になっていることを指す。

胸周りに入るシワと空気を比較

6枚の長襦袢の胸周りに入るシワと空気を比較する。
①のみ衿合わせの角度が違うが一緒に比較していきたいと思う。

胸周りに入るシワや空気は大きく分けて2箇所。
一つ目は、鎖骨あたりに入る縦方向のシワと空気。
二つ目は、バストトップから脇に向かって大きく斜めに垂れる布。

鎖骨の上にできるシワは、補正を入れて無くす方法もあるかもしれないが、下の写真を比較すると分かるように、仕立てる寸法を変えることでシワを少なくすることができる。写真⑥が極端に鎖骨の上のシワが少なく、写真③では衿に並行して布がたわんでいるのが分かる。(写真は全て胸周りの補正は無く、腰周りのみ補正有り)

バストトップから斜めに垂れる布は、写真②と写真⑥を比較すると良く分かる。写真⑥はより多くの布が斜めに落ちている。写真③も横方向に布が引っ張られているように見える。これも仕立てる寸法を変える着姿が変わると言える。

写真①長襦袢_寿光織
写真②長襦袢_松葉模様
写真③長襦袢_色無地用
写真④長襦袢_格子柄グレー
写真⑤長襦袢_麻の葉紫
写真⑥長襦袢_あさみ

シワや空気は悪いものなのか

胸周りのシワや空気が入っているからといってそれが直接衿崩れの原因になるとは考えていない。
ただ、シワや空気を無くしたいという心理が働く。表の着物をより綺麗に着ようと思った時、内側の長襦袢にシワがあれば表にそのシワが多少は響いているように思う。長襦袢の段階から綺麗に着たい、と誰しもが一度は思うことだろう。シワや空気が入った状態は悪では無いが、こう言うものだ、で済ませたくないと思う。

シワや空気と衿崩れについて

衿崩れの原因は、衿が身体に沿っているかどうかが問題だと思っている。身体の前にある衿と、後にある衿の引っ張り合いでバランスが取れていれば衿崩れは最小限に抑えられる。衿を身体に沿わすために、背中に空気が入らないよう後身頃を引くき、前身頃は衿さえ身体に沿っていれば良いので前身頃は空気が入っていても問題がないと考えている。
また、衣紋が詰まってくる原因も、仕立てではなく、着方に原因がある。
背中心のみ衿を後へ引っ張るようにして着用すると、衣紋は詰まってくる。背中心のみではなく、肩から袖まで全ての布を後ろへ移動した状態で着用することで「衣紋が詰まってくる」は解消される。

まとめ

今回の比較写真は全て自装した写真である。補正は胸周りには入れず、腰周りのみ入っている。着付けのプロにお願いすると着付けのテクニックでシワや空気が無く完璧な着姿が出来上がるかもしれない。しかし、それでは意味がない。自分で着る時に着心地の良い長襦袢であることに意味がある。その日の体調や気分によって手の動きが変わり、着姿の変化もあるだろう。ある程度のシワや空気は許容範囲内である。ある程度の衿崩れも、着物を着て動いている以上自然なことだと考えている。しかし、その範囲を超える着崩れはやはり仕立てと着付けの両面から解決したいと思っている。

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この記事を書いた人

KOTARO

現役和裁技能士が「仕立てと着姿」をテーマに、どんな寸法で、どんな仕立てをすると、どんな着姿になるのか、自分自身の身体で検証しています。