羽織には「 前下がり (まえさがり) 」と言う寸法が付く。
以前までの私は、羽織丈が長くなるほど、前下がりが多く必要なのではないか、と思っていたが
どうやらそうではないらしい。
前下がり とは
羽織は、後身頃よりも前身頃を長くして仕立てる。
このとき後ろよりも前の方が長い、つまり下がっているというのが「前下がり」である。
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前下がり の寸法
私が習ってきた前下がりの寸法は、7分。
今回仕立てた羽織の前下がりは、1寸。(下写真にて着用)
平成2年の和裁本では、「2cm(5分)」
昭和46年の和裁本では、「3cm〜3.5cm(8分〜9分)」
明治12年の和裁本では、「1寸」
時代により若干の変化はあるものの、5分〜1寸の間で落ち着いているように思う。
《参考文献》
平成2年発行「図説 きものの仕立方」村林益子著 紫紅社
昭和46年発行「和裁・上級コース1」大塚未子きもの学院
明治12年発行「裁縫圖解 教授必擕」
前下がり 寸法はいくつが良いのか
現段階での私の見解は、繰越と同寸にすることがひとつの基準になると考えている。
基本をどこに置くのかだが、まずはこう考える。
①羽織も衣紋を抜く → ②衣紋を抜いた分が前下がりとなる
ここで注意したいことは、繰越と衣紋の抜く量が基本になっていること。
例えば、着物の繰越が7分なら、衣紋も7分だけ抜いて着ている。
この状態で羽織の前下がりを考えるなら
着物の繰越=羽織の前下がり が計算上成り立つ。
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