今年も 繰越 0 の着物を仕立てました。
正確には、昨年の着物を解いで仕立て直したんですが
なぜ今年も 繰越 0 にしたのか?
極論、 繰越 は無くても衣紋は抜ける。
ですが、ここではもう少し深堀してみたいと思います。
繰越 とは、どういうものなのか?
言い換えれば、
着物の肩山を身体のどの位置に持ってきたいですか?
と、同じだと思っている。
着物の肩山を
身体の肩山に乗せて着たいのか、背中側へずらして着たいのか。
どのくらい背中側へずらして着たいのか。
ここがハッキリすると、繰越寸法がハッキリ決まると思う。
繰越 を減らすと何が起こるのか?
着物の肩山が背中側へ移動する
まずは、肩山がぐっと背中側へ移動する。
背中側へ移動すると、後ろの袖付けあたりに布が溜まる。
この溜まった布が程よければ、女性らしいドレープとして認識し
この溜まった布が多すぎれば、少々だらしなく見えるかもしれない。
直線的な印象で着たければ、この布を減らし
曲線的な印象で着たければ、この布を利用しよう。
そんな風に考えている。
この着物は、極端に曲線的に着ようと努力した物。(写真①)
裄が長くなる
同じ身長でも女性の着物が、男性の着物よりも
裄が短い理由は、「衣紋を抜くから」というのが理由の一つ。
繰越 を減らし、いつも通り衣紋を抜けば、必然的に裄が長くなる。
正しくは、裄を長く見せることができる。(写真②)
写真①と②は、裄の寸法が同じ。
違うのは繰越と着方。
裄の長さは、着方で見せ方を変えることができるし
それを仕立てでお手伝いすることもできる。
長い裄は、エレガントな印象を与えてくれる。
なぜなら長い裄は、優雅にゆったりとした時間と過ごすには、長い袖も邪魔にならないからだ。
たくさんの曲線が現れる
たくさんの曲線が現れることをどう捉えるか、が問題だが
私は曲線が多いほど女性的だと感じる。
衿と肩がなだらかに流れる曲線
袖口のたわみ
肩から落ちる布
袂のゆがみ
背中の脇に溜まる布
この曲線の量とバランスを感がえるのも良い切り口だと思っている。
脇に溜まる布の変化
着物の寸法講座で、一番多い質問は「前身頃の脇あたりに溜まる布を減らしたい」
繰越を減らし、衣紋をたくさん抜いたことで、この布を減らすことが出来ていると思う。
これは、また次回検証しよう。
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