繰越 は、どんな影響を与えているのか?どんな意味があるのか?
繰越 寸法を変えると、着姿はどう変わるのか?!
衿合わせはどう変わるのか?!
衣紋の抜け方はどう変わるのか?!
肩山の位置は?!
衿の角度は?!
繰越0と繰越7分の着物と長じゅばんを使い
着物の寸法「繰越」について考えてみました。
繰越 0と7分の違い -衣紋を抜く前-
繰越0と繰越7分の長じゅばんを、それぞれ
身体の肩山に、長じゅばんの肩山を乗せて着付けました。
(下の写真)
「繰越」という寸法があることで
写真右側(繰越7分)の方は、すでに衣紋が抜けた状態を作っています。
着付けで言う「衣紋を抜く」とは、
私は、着付けと仕立ての両方で抜くことを前提としています。
つまり、上の写真のように
長じゅばんの肩山を、身体の肩山に乗せて着るとこは無く
長じゅばんの肩山は、背中側へズレた状態で着ること
を「基本」としています。
繰越 0と7分の違い -衣紋を抜いた後-
背中心の衿の付け根が、同じ位置になるよう
衣紋を抜いて着付けをしました。
衿の横姿の違い
違いは2つです。
- 長襦袢の肩山の位置が違う
- 背中側に倒れる衿の角度が違う
衿の後姿の違い
左側(繰越0)の方は、
衿付け側で、肩明きの頂点が少し角ばって見えます。
背中の明き具合は、横に広く、楕円を描くような印象です。
右側(繰越7分)の方は、
衿付け側で、衿の中心から肩山へ向かって、円を描くようなカーブになっています。
背中の明き具合は、少し内側へ倒れこむような印象です。
衿の前姿の違い
衿合わせの角度は、同じになるようにしました。
注目ポイントは、耳の下になる位置の衿の角度です。
写真左(繰越0)の方は、
ボディの肩と、衿の角度が大きく、衿は少し寝ている印象です。
写真右(繰越7分)の方は、
ボディの肩と、衿の角度を見ると、着付け教室で習う基本の衿の形
になっていると思います。
着物を着た状態で見る 繰越 の違い
次に、それぞれの長じゅばんに着物を着せて
繰越0と繰越7分の比較をしました。
着物もそれぞれ、繰越0と繰越7分です。
横姿の違い
- 背中心での衿の傾き方が違う。
- 腕の後側にある布の量が違う。
- 肩山の位置が違う
後姿の違い
- 衿付けの弧の描き方が違う
- 首の見え方が違う
前姿の違い
- 衿と肩の角度が違う
- 剣先の位置が違う
繰越 0着用の感想
繰越0の着物を着用した際
着た瞬間にその違いが分かるほど、剣先から肩山までの衿が、
とてもきれいに身体に沿ってくれました。
剣先の位置がグッと上がった状態が良かったのではないか
と考えています。
繰越0の剣先の位置を、繰越7分で換算すると、
肩山から5寸3分という寸法でした。
私の長じゅばんの剣先位置が、
肩山から4寸5分なので、着物で5寸3分となっても、
特に問題ないように思えます。
繰越7分の着物で、剣先をグッと上げると、
同じように衿は綺麗になるのか、また検証してみたい課題です。
2020年7月15日
繰越寸法、身丈、その他の寸法はそのままに
剣先の位置だけを短くして着物を仕立てました。
まとめ
繰越寸法を変えると、衿回りの着姿は
前・後・横、全方向から違った印象へ変わることが分かりました。
繰越の基本は
衣紋をたくさん抜きたい方は、繰越寸法も大きめ
衣紋をあまり抜かない方は、繰越寸法も小さめ
ですが、
・衿合わせの好み
・作りたい衿のの後姿
・もっとコントロールしたい衣紋の抜き具合
繰越寸法一つ変えるだけで
衿の印象を大きく変えることが出来ます。
繰越 寸法はいくつが良いのか?
この問題は、
「着物の肩山は、どの位置に来てほしいのか?」
という問題と同じだと思います。
好みの衿合わせを作るとき
着物の肩山は、どの位置に来ているのか
に、注目すると、繰越寸法を導き出すことができます。
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