“ 衣紋 はたくさん抜きますか?”|仕立て屋がお客様にする質問

仕立ての依頼を受けた時、仕立て屋はお客様にたくさんの質問をします。ここでは、その質問の意味と意図を解説したいと思います。

質問: 衣紋 はたくさん抜きますか?

この質問は、着物や浴衣・長襦袢・羽織・コートの仕立てを受けるときにする質問の一つです。
特に着物の場合は、仕立て寸法を見直したいご要望がある場合や着心地に違和感をお持ちの場合、この質問をします。

衣紋 (えもん)とは

ここで言う“衣紋”とは、衿の後の部分を指します。

衣紋をたくさん抜く とは

“衣紋をたくさん抜く”とは、後の衿を首からよりたくさん離すことです。
下の写真、黄色の丸で囲った部分の衿に注目します。
より首から離して着用することを、「衣紋をたくさん抜いて着るのが好きです。」「衣紋は標準より抜いて着用したいです。」「衣紋をたくさん抜くのは好きではありません。」などと表現しています。

衣紋をたくさん抜いた着用画像
衣紋をたくさん抜いた着用画像
衣紋を抜かない着用画像
衣紋を抜かない着用

質問の意図

衣紋をたくさん抜くかどうかで繰越寸法を決めています。

繰越寸法は、衣紋の抜き具合と衿合わせの角度により変わります。
着用で衣紋をたくさん抜く場合は一般的に繰越寸法を大きくし、衣紋をあまり抜かない場合は繰越寸法を小さくします。

また、例えば下のような着心地の悪さを実感している場合、必ずこの質問をします。
・衣紋が抜けない
・衿崩れがある
・脇に余る布が気になる
・首横の衿が立つ
・衿合わせが決まらない
など

この着心地の悪さは繰越寸法を変えることで解決できるものもあります。

《衣紋の抜き具合と繰越寸法の関係》
下の記事で詳しく書きましたのでぜひご参照ください。
衣紋を抜かない=シャープな 衿合わせ という方程式

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この記事を書いた人

KOTARO

現役和裁技能士が「仕立てと着姿」をテーマに、どんな寸法で、どんな仕立てをすると、どんな着姿になるのか、自分自身の身体で検証しています。