着物寸法の「 繰越 」とは、どのような働きをしているのか
繰越7分の長じゅばんと、繰越の無い長じゅばんで、比較してみました。
着物寸法としての比較ですが、
今回は、長襦袢を使用した比較をします。
■比較条件
・衿合わせは、同じ角度にすること
・衣紋を抜く量は、同じ量にすること
■比較寸法
・繰越0の半襦袢
・繰越7の長じゅばん
※理想は同じ長じゅばんでの比較ですが、今回は半襦袢と長じゅばんでの比較をしました。厳密には、仕立て寸法が少し違うところもありますが、今回の比較には、あまり影響が無いという判断です。
繰越 とは?
上の写真は
身体の肩山に、長襦袢の肩山を乗せた写真です。
繰越0は
男物と同じになるので、衿が首に引っ付いています。
繰越7分の方は
長襦袢の肩山から7分背中側から衿を付ける(厳密には違いますが)ので、
この時点で少し衣紋が抜けた様な着姿になります。
「繰越」とは、仕立ての段階から衿を背中側に付け
衣紋を抜きやすくする工夫になります。
着姿の違い
長じゅばんの肩山の位置
背中の同じ位置まで、衣紋を縫いた写真です。
基本の着方では、
長じゅばんの肩山はを、身体の肩山よりも背中側へずらします。
長じゅばんの肩山に注目します。
身体の肩山からどのくらい移動しているのかを比べると、
全く違う位置にあることとが分かります。
肩山の位置が、より背中側へ移動すると
おはしょりの量と肩の後側に出るドレープの量に変化が現れます。
衿の後姿
後ろから見ると、衿の形に違いがあります。
衿付けのカーブに注目してみます。
どのような弧を描いているのかを比べると違いが見えました。
繰越0では、背中心から肩明きに向かって、繰越寸法が無いので、
横長の弧を描いています。
一方、繰越7分の方は、
背中心から肩山方向へ向かって、円を描くような弧になっています。
「繰越0の方が、衿が小さくまとまった着姿になるのではないか」
と想像していましたが、
全く逆の展開になりました。
比較画像では、
繰越7分の方が、衣紋を抜いた時に見える首の面積が小さく、
より衿がコンパクトに見えます。
衿の前姿
最後に、前から見た衿合わせの比較画像です。
今回の比較では、衿合わせが同じ位置になるよう工夫をしました。
衿合わせの角度が同じ、そして、衣紋の抜く量も同じ、
で、比較しています。
この比較画像から分かることは、
首横での衿の角度です。
どのくらい衿を寝かせた衿合わせができるのか、
ということです。
比較画像から分かるように、
繰越0の方が、繰越7分に比べて、
衿を寝かせた着姿を作ることができる、と言えます。
簡易的に角度を測ったところ、約4度の差がありました。
数字にすると、たった4度ですが、着用してみると
そのの差は明らかです。
まとめ
繰越寸法を変えて、同じ量の衣紋を抜くと
着姿は、どんな変化をするのか
を見てみました。
繰越寸法を減らすと、耳の下の衿は寝ることが分かりました。
また、大きく変わるのは、衿の後姿だということも分かりました。
「繰越0」という寸法は究極ですが
繰越寸法を減らすと「繰越0」の衿へ近づくことが分かります。
繰越寸法を変えてみるときの参考になると嬉しいです。