今年仕立てたコート4着を着用し、写真を撮ってもらったら、色々と問題点が見つかりました。まずは、9分丈で仕立てた綿麻の道中着(下写真のピンクの道中着)について紹介したいと思います。

着用姿
全身の着用姿は下の写真のような感じです。
《仕立て寸法》
・身丈(肩)3尺5寸
・裄1尺8寸5分
・前巾8寸3分
・後巾7寸8分
・繰越1寸5分
▼道中着の詳しい仕立て寸法はこちら
9分丈の道中着をしたてました。



感想①繰越が大きすぎた
このコートの繰越寸法は1寸5分です。コートは肩山が身体の肩山にあると良いのでは無いか、という仮説から道中着の繰越も大きくしました。道行コートのときは繰越寸法を大きくしたことで調子が良いと感じました。道中着も同じように調子が良くなるだろうと予想しましたが、結果的には大きすぎは良くないと感じました。脇に余る布が悪目立ちし、オーバーサイズのコートを着てるような印象になっていると思います。
感想②前巾を大きくしても変わらない
この道中着を仕立てる時、「前巾を大きくすれば上前の重なりも増えるのではないか」という仮説を立てて、前巾8寸3分にしました。仕立てあがり後、ボディーに着せた段階で、「前巾を大きくしても上前の重なりが増える訳では無い」と結論を出していましたが、今回写真を撮り、より確実になったと思います。前巾が大きい分、脇に布が余りすぎている印象になっていると思います。
感想③裄を「着物の裄+5分」は正解
コートの裄の基本「着物の裄+2分」に対して「着物の裄+5分」にして正解だったと感じています。コートの袖口からも振りからも着物の袖が出ないことが良いと思っていますが、今回上手くいっていると思います。
感想④衿巾4寸は良かった
道中着の広衿は背中心で3寸というのが基本ですが、背中心で4寸にしてみました。着物の衿をスッポリ覆えるようにと、この寸法にしましたが、良かったと思っています。基本は3寸、スッポリ隠したい時は4寸まで許容範囲にして良いと思います。
感想⑤動くと気崩れる
動くとコートの衿が開き気崩れるのが今回のコートです。一つは繰越寸法が良くないのが原因だと思っています。
動くと下の写真のような着姿になります。なんとも残念です。

まとめ
道中着という物は、ゆったりと着用する物なのだと感じました。道中着の衿は、裾から反対側の裾まで一枚で繋がっています。今回着崩れを解消するために、衿付けラインをより身体を覆うように変えたとしても、衿が一枚で繋がっているという制限があるので、きっとどこかに不具合が出るんだろうと思っています。
〈分かったこと〉
今回この道中着を仕立て着用し分かったことは、道中着の場合は、道中着の肩山が身体の肩山よりやや後にある方が良いと言うこと、この道中着の寸法はバランスが悪い、と言うことが分かりました。
〈良かった点と次回試してみたいこと〉
今回道中着の上前の紐に羽織紐を使用しました。この羽織紐の活用は私の好みで今後も合う物があれば積極的に取り入れていきたいと思います。次回試してみたいことは、この道中着の衿をスナップで止める方法に変えれば、衿崩れ無しで着用できるのか試してみたいです。
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