“羽織という物に対して興味があまり無い”
“羽織を着たいという願望が薄い”
“羽織を必要と感じていない”
と思っていた私が、 羽織 が楽しい と感じるようになりました。なぜ楽しいと感じるようになったのか、私が「羽織」という、新しい世界に足を踏み入れる前と後の心境の変化を思い返してみました。
昨年(2022年)、「羽織」をテーマにし、春夏秋冬1年を通して8枚の羽織を仕立て着用しました。袷・単・透ける物・縮緬・羽二重・紬・紗。代表的な物はこの時に全て着用できたと思っています。
この1年間の仕立てと着用は、私に新しい世界の楽しさを教えてくれ、大きな壁と思いこんでいた“羽織の壁”もあっという間に飛び越えさせてくれました。
(2023年9月24日に配信したニュースレターに加筆修正しブログにしました。)
羽織 をテーマにする前の私の心境
- 羽織をいくつも持つのは考えられない
- 何にでもあう万能な羽織が1枚あれば良い
- 羽織にお金を使うなら、着物や帯にお金を使いたい
- 夏の暑い時にあえて羽織を羽織る必要はない
- 羽織の立ち位置がわからない
- 羽織がいったい何者なのかわからない
- どんな心境で今日は羽織を着ようとなるのか想像できない
- 今持っている着物にどんな羽織を合わせれば良いのかわからない
- 羽織は防寒着という認識だった
- 道行コートは仰々しく、道中着は好みでなく、消去法で羽織を着ていた
- 羽織を着ている方を見て、とても着物に詳しく、日本文化にも詳しく、雲の上のような存在に感じていた。
- ただ着物が着られる私が羽織を着て、さも着物に詳しそうな顔になるのが不釣合いに感じていた。
などなど、実にたくさんのことを感じていました。
実際に着用してみると、案ずるより産むが易し、なんてことはありませんでした。
どんな着物にどんな羽織を合わせるのか、始めは、着物を着始めた時と同様、わからないことも多く、取り合わせも探り探り。しかし羽織を着てしまえば、羽織の素材や羽織紐の選び方、柄の好みが見えてきました。1年を通して羽織を着用し、ようやく自分の好みが分かったばかりですが、今感じていることを次に挙げてみました。
今、 羽織 について感じていること
- 羽織は男性的な印象になると思っていたが、素材と色柄を選べば女性的にもなれる
- 自分の好みの素材と色柄がはっきりし、より好きな物を選べるようになった
- 羽織紐も好みがはっきりした
- 羽裏は妥協しない。妥協すると着用頻度が落ちる。
- 羽織の立ち位置は“カーディガン〜ジャケット”というところかなという認識
- 別に着物に詳しくないですけど羽織着てますって自信持って言える
- 薄地の羽織や濃地の羽織、無地も柄物も色々欲しいと思う
- 防寒着だけど、+雨避けに使えると思うと万能
- 羽織は撥水加工した方が良い
- 羽二重の羽織だけは撥水加工しない
- 小雨の時は雨コートではなく撥水加工した羽織が使える
- 夏以外は羽織は着用したいと思うようになった
- 夏は特別な時以外着なくて良いと思う
- 単の羽織は意外と便利だと思った
- 帯付きが恥ずかしいという概念は無いが、薄羽織はおしゃれだと思う
- 何かと黒地の羽織は使い勝手が良いように思う。黒のカーディガンや黒のジャケットが何かと使えるのと同じ感覚。
- ちょっとよそ行きな雰囲気を出せる。ドレスアップでは無く、格式高くでも無く、厳粛まではいかなくても少しカチッとしたい時にも使える。
- 縮緬の柄物な羽織は女性らしくてオシャレだと思う
- “便利だから着る”ではなく、“おしゃれだから着る” に意識が変わった
一番の大きな変化は羽織に対して “便利だから着る”ではなく“おしゃれだから着る” に意識が変わったこと。この変化はとても大きな変化だったと思います。
「羽織」という新しい世界
“羽織を着る”というのは、“着物を着る”とはまた違った “新しい世界” だと思うのです。
着物をどれだけ着られるようになっても「羽織」というのはその先にある新たな世界であり、自分から扉を開かなければ見ることのできない閉ざされた世界のように感じるのです。“羽織着た方がいいわよ” とか “チリ除けにもなるわよ” などと言われても、そこにお金を使うだけの価値を見出すには、実際に扉を開いてその世界を楽しいと感じなければ難しいのではないかと思うのです。
実際に私も羽織を自分のテーマにしていなければ、未だに羽織を好んで着用することはなかったかもしれません。着物に慣れてきたからといっても、羽織はもうワンステップ上だと感じている方も多いのではと思います。
今私が訴えたいのは「羽織は楽しい!」ということ
思い切って扉を開けてみたら世界が広がりました。
夏以外の季節は本当に便利です。着たり脱いだりは、ジャケットと同じように扱えばルールを気にすることもなく、普段着ならなおさら気楽です。夏はさすがに暑いと感じ、今年(2023年)は着用することはありませんでした。
羽織を着たくないと思っていた時は、ストールでしのいでいましたがストールの難点は片手が塞がること。ストールにはストールの良さがあるので私も好きですが、羽織は両手があくので荷物が多くなりそうな時や着脱が頻繁にできない時には便利だと感じています。
羽織を敬遠していた理由の一つに、大きく見えるから、という物がありました。羽織を着た途端、ひとまわり巨人になった気がするのです。これは、着用頻度を上げていくにしたがって、巨人の感覚はなくなりました。“着慣れる”という物だと思います。
羽織を仕立てていて楽しかったのは、今まで見えていなかった素材が見えるようになったこと。特に夏物素材の多さを知り、とても楽しかったのを覚えています。女物よりも男物の方が圧倒的に種類が多く、よく男物の反物を見ていました。
着物をいずれ羽織に仕立て替えることを視野に入れて反物を見るようになりました。大好きで気に入っている布と長く付き合えることの楽しさを心から感じています。
“便利だから着る”ではなく、“おしゃれだから着る” に意識が変わり、色々な素材・色・柄の羽織を楽しみたいと思うようになっています。この着物にはこの羽織、という具合に着物と帯のコーデネートに加えて羽織の取り合わせまで考えられるのは楽しいです。羽織中心にコーディネートを組むのも楽しい物です。
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