着物の 抱巾 寸法と衿合わせの比較

着物の衿合わせは 抱巾 で決まると言えます。①抱巾が広いのか狭いのか、②反物巾のどの位置で抱巾をとって仕立てているのか、この2つの組み合わせで衿が変わります。ここでは、仕立て方が同じで抱巾の寸法が違う3つの着物を比較したいと思います。

抱巾 の違う3つの着物

今回は下3つの写真の着用着物について比較していきます。
込み入った話をすると、抱巾の寸法が同じでも脇線をズラして仕立てる場合とズラさず仕立てる場合では、着心地が全く違うので、抱巾の寸法だけで比較することはできません。今回比較する3つの着物はすべて“脇線をズラしていない”着物で比較していきます。

赤茶色の緞子:抱巾はバストサイズから割り出した標準寸法

下写真の赤茶色の着物は、抱巾の標準寸法「バスト÷4+2cm」で仕立てた着物です。
今から数年前の着用写真になりますが、当時は胸を覆うような衿合わせがしたかったので、この抱巾では布が足りないなと強く感じた着物でした。衿でなんとか調整しようと頑張ったことを覚えています。この着物を機に、これ以降は抱巾の寸法を「バスト÷4+2.5cm」で仕立て始めました。

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濃紺の小千谷縮:抱巾はバストサイズよりも広い着物

下写真の濃紺の小千谷縮は、抱巾の標準寸法よりも4分広く仕立てた着物です。
胸を包むような衿合わせをするためには、抱巾もそれなりに巾広くしなければいけないだろうと思い、仕立てた着物です。前項(赤茶色の緞子)の着心地と比べると驚くほど簡単に衿合わせができ、布に無理をさせることもなく、やはり胸を覆う衿合わせがしたければそれなりに広めの抱巾が必要だと確信しました。

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白大島:抱巾がバストサイズよりも狭い着物

下写真の白大島は、抱巾がバストサイズより狭くなるように仕立てた着物です。通常抱巾は、「バスト÷4+2cm~2.5cm」で計算しますが、それよりも5分(2cm)狭く仕上がっています。バストサイズより狭いと衿合わせができないのではないかと思っていましたが、難なく着ることができました。抱巾の寸法は、バストサイズよりも狭くても問題なく着られると断言できます。ただ、着用する時、衿合わせをシャープにすることがポイントです。胸を覆うような鈍角の衿合わせをすると、身八つ口からバストトップに向かって斜めのシワができおかしな事になります。

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まとめ

抱巾は狭くても広くても着ることができます。問題は“どのような着方をしているのか”です。衿合わせがシャープな場合は、抱巾を狭くすることでよりスッキリと着られるようになるかもしれません。胸を覆うような衿合わせの場合は、抱巾を広くすると簡単に衿合わせができるようになるかもしれません。もし着物を誂える機会があれば、抱巾という寸法に注目し、衿合わせの具合と合う寸法にすると良いと思います。

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この記事を書いた人

KOTARO

現役和裁技能士が「仕立てと着姿」をテーマに、どんな寸法で、どんな仕立てをすると、どんな着姿になるのか、自分自身の身体で検証しています。