毎年4月に名古屋で開催されている「新之助上布展」に今年も仕立て屋として入らせていただきました。開催中店頭に立ち、直接仕立てのご依頼を受けるのですが、お客様から“仕立ての相談、楽しかった!”と言ってもらえることが本当に嬉しいです。ここでは、お客様とのやり取りを少し紹介したいと思います。

着心地重視の寸法と見た目重視の寸法
仕立てを受ける時、まず必要になるのが仕立て寸法です。お客様と一緒にどんな寸法で仕立てるのか相談します。お客様が持っている寸法とその寸法で仕立てた着物の着心地、着用姿の確認、着崩れや気になる点の確認。仕立て屋としては、せっかく直接話を聞きご依頼を受ける機会なのでより良い物を着てほしいと思っています。
着心地重視の寸法
着心地重視の寸法は、身丈・前巾・後巾・褄下丈など、身体に纏う部分の寸法。ゆったり着るのか好きなのか、タイトに着るのが好きなのかで寸法を変えます。お客様と着心地の好みに合った寸法はどれになるのかを一緒に決めていきます。
見た目重視の寸法
見た目重視の寸法は、裄・袖丈・袖丸・繰越など、着姿の印象が変わる部分の寸法。その中でも袖丈は、長め・標準・短めと、長さの違いが印象の違いと直結しています。例えば袖丈が長いとエレガントなイメージ、短いと活動的なイメージです。ご希望があれば、即寸法に反映します。
誂えるなら全ての寸法をお客様と確認したい
せっかくお客様と直接お話しできる機会なので、仕立てに必要な全ての寸法をお客様と一緒に考えたいと思っています。その中には仕立て屋しか気にしない寸法も含まれているかもしれません。お客様がよく分からない寸法もあると思います。でもその寸法さえもお客様にお伝えすることで着物の誂えが楽しいものになると思うのです。
柄合わせの確認
柄合わせの確認は必須です。例えば縞の場合、衿に何本縞を出すのかで着用イメージが変わります。ツートンの場合は、どちらの色を衿にするのかだけでなく、着物全体の色の配置を必ず確認します。仕立てる者としては、お客様に直接確認できる機会はとても貴重です。
セミオーダーでは楽しさ半減
細かい寸法も自分で決められるって、すごく楽しいことです!着物以外でも細部までオーダーできる物ってたくさんあると思います。ジャケット・シャツ・バンツ・バッグ・靴・文房具・食器、どれをとってもオリジナルっていつも楽しいです。着物の誂えもそうあるべきだと思うんです。「仕立てをお願いする」ことは、その反物を自分はどんなイメージで着用するのかを想像することです。私は仕立て屋として、その楽しみのお手伝いをすることだと思っています。
まとめ
今回の新之助上布展でも寸法の相談をし終わったお客様から「すごく楽しかった」の一言をもらった時は、すごく嬉しかったです。「仕立ての依頼をする=楽しいこと」だと確信しました。また来年もきっと新之助上布の展示会があると思います。その時、楽しいことのご提案ができるよう、私もいろいろ試したり工夫したり、着物を楽しみたいと思います。
おまけ
新之助上布展スタッフと♪

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